『今夜ひとりのベッドで』について

お題:「秋」

 

四季のうち、春・夏・冬を題材にした物語は数多くあるが、秋をがっつり題材にした物語というと少ないような気がする。そこで、秋を感じられるという程度の作品を紹介したい。2005年10~12月にTBS系列で放送されていた『今夜ひとりのベッドで』(脚本:龍居由佳里、演出:生野慈朗など)というテレビドラマだ。

 

あらすじ:主人公(本木雅弘)は妻(瀬戸朝香)と幸せに暮らしているが、なかなか子供が出来ずどこかですれ違いを感じている。本木雅弘は腹違いの弟(要潤)の結婚式に出席するが、弟は新婦(奥菜恵)を置いて別の女(サエコ)と逃げてしまう。本木雅弘奥菜恵に同情して色々と世話を焼くうちに、彼女に惹かれていく。一方、サエコに振られた要潤は瀬戸朝香に惹かれていく。加えて、本木雅弘の親友(佐々木蔵之介)も、本木雅弘と結婚する前から瀬戸朝香に恋心を抱いていて、2人の夫婦関係が危うくなるのをきっかけに彼女にモーションをかけ始める。

 

あらすじだけ見ると、ドロドロした昼ドラのようだが、実際にはかなりカラッとしたドラマだ。妻を捨てて別の女のもとに行く主人公を悪役として描くこともなければ、夫に逃げられる妻を悲劇のヒロインとして描くこともない。彼らのゴチャゴチャした色恋沙汰をどこか可笑しみを含ませて描いている。

 

なぜこのような描き方がされているのか。それはこのドラマの根底に結局人は孤独であるという考え方があるからだ。恋とは、人が寂しいから他者を求める、ただそれだけのこと。相手のことを思いやるとか相手のために何かをしたいとか、そんな感情は副次的なもので、第一義的に恋とはその程度のことなのだとこのドラマは訴えているのではないか。だから、妻を捨てて別の女のもとに行く男に批判的な視線を投げかけることはなく、むしろ自分の気持ちに正直に従った男をどこか優しい視線で見つめるのだ。彼は寂しいから他者を求めた、ただそれだけのこと。人間ってその程度の存在でしょう。そんな風に恋における人間の情けなさをコミカルに描いて肯定してくれるのだ。

 

中学3年生の僕の心にキレイに突き刺さったこのドラマ、http://www.turen5.com/vplay/417608.htmlのページで全10話を見ることが出来るので、興味を持たれた方は是非。ちなみに、キャストの地味さが響いたのか、放送当時の平均視聴率は6.6%。悲しい。いつか評価される日が来ることを願う。

 

文:i

 

次のお題→「冬」